2022年2月1日、政府は新型コロナウィルス禍で財源が枯渇したことを受けて雇用保険料の引き上げを含む雇用保険法の改正法案を閣議決定した。ということでサラリーマンはまた手取りが減ってしまう…。現在まで公開されている情報を元にいつどれくらい減るのかを確認する。
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引き下げが始まるのは2022年10月から
現状0.9%→4月0.95% 10月1.35%の2段階引き上げを予定している。
現行の雇用保険料率は以下
労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 | |
一般の事業 | 3/1,000 | 6/1,000 | 9/1,000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 4/1,000 | 7/1,000 | 11/1,000 |
建設の事業 | 4/1,000 | 8/1,000 | 12/1,000 |
4月に引き上げる料率は雇用保険料の内、「雇用保険2事業」の料率。これは事業主にのみ課せられているから4月に労働者負担分が増えることはない。
労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 | |
一般の事業 | 3/1,000 | 6.5/1,000 | 9.5/1,000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 4/1,000 | 7.5/1,000 | 11.5/1,000 |
建設の事業 | 4/1,000 | 8.5/1,000 | 12.5/1,000 |
10月に引き上げる料率は「失業等給付」の料率。これは労使折半とされているから労働者負担分が0.2%増加する。
労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 | |
一般の事業 | 5/1,000 | 8.5/1,000 | 13.5/1,000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 |
建設の事業 | 6/1,000 | 10.5/1,000 | 16.5/1,000 |
0.2%ということは月収30万円の労働者なら月600円。年収500万円の労働者なら年間1万円の手取りが減る計算だ。年間で考えると結構きつい。
雇用保険料率が引き上げられるのは12年ぶり
雇用保険料率はこれまで源泉徴収(給与天引きのこと)される保険料の中で唯一減少傾向にあった保険だ。保険料率が上がるのは実に12年ぶり。
リーマンショックの余波で2010年度に料率が引き上げられて以降、失業率は低下傾向にあった。まあ社会保険料も税もガンガン上がって、手取りを著しく減らされているから、全然景気が良い実感はないけど、働きたくても働き口がないという状況は改善されていた。
保険料引き上げの原因はコロナ禍の雇用調整助成金の大幅増
雇用保険の積立金は2015年度には6.4兆円に達していた。同年の収入が1.8兆円、支出が1.7兆円であることを考えるとかなりバランスが取れている。年金の財源はカツカツだけど、雇用保険は安定した財政運営ができていたわけだ。
国庫負担割合の大幅減
雇用保険は加入者の保険料と国庫の2つを財源としている。2017年度以降、国庫負担金は大幅に削減された。その額およそ1/10。元々保険料と比べると大きな割合を占めているわけではないけど、2016年度以降の保険料率引き下げも重なって、以降収支は一転赤字に。
参考:職業安定分科会雇用保険部会(第133回)令和元年10月29日資料2
コロナ禍の雇用調整助成金の大幅増
ただでさえ、収支が赤字になって積立金を食い潰していたところに、コロナ禍で雇用調整助成金の支給が激増した。コロナの前は雇用調整助成金なんてほとんど出ていなかったのに、これだけで従来の年間支出額を超える勢い。まあ、これはウィルスのせいだから仕方ない。
参照:白書 第1-(6)-5図 雇用調整助成金等の支給決定額の推移
今後も可処分所得はどんどん減っていく
元々、厚生年金保険料や健康保険料に比べれば雇用保険料の負担はそこまで大きくない。今回の料率引き上げはある程度仕方ないと思う。ただ、多分これは始まりに過ぎなくて、コロナ禍の財政出動のつけはこれからどんどん回ってくるはず。これから可処分所得はますます減っていくと思う。
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