企業が給与ではなく福利厚生を充実させる理由

働く会社を選ぶ際、何を重視する?

給与、勤務地、業務内容、ワークライフバランス、得られるキャリア…etc。人によって何を重要視するかは異なるけど、福利厚生は重要な要素の一つになると思う。

新卒初任給の額がそこまで大きく変わらない一方で、福利厚生の充実度は会社によって大きく違う。(一般的に大企業ほど充実している。)

それでは、こんな疑問を抱いたことはないだろうか。「いやいや、福利厚生とかいいからその分、給料上げてくれよ…。」

企業はどうして給与ではなく福利厚生を充実させるのか、その理由を解説する。

給与を上げても社員まで届かない

今の日本は所得がある程度の水準に達すると給与を上げても本人まで届かないんだ。以下、具体的に考えてみる。

一般企業に勤務する以下の会社員を想定する

  • 年間の所得は500万円
  • 40歳
  • 東京都在中
  • 協会けんぽ加入
  • 会社は農林水産・清酒製造・建設の事業以外

こちらの社員の年収を1万円上げると、以下の額が給与から徴収される。

徴収項目 徴収率 備考
所得税 20% 3,300,000円 から 6,949,000円までの所得に対しての課税額
住民税 10% 均等割額については考慮しないものとする
健康保険料 4.92% 東京都の協会けんぽ健康保険料率
介護保険料 0.9% 協会けんぽ介護保険料率
厚生年金保険料 9.15% 第一号厚生年金被保険者保険料率
雇用保険料率 0.3% 農林水産・清酒製造・建設の事業以外の雇用保険料率

 

つまり、給与を上げても社員には半分ちょっとしか届かない。しかも社会保険料は社員の給与が上がった分、会社も負担しなければならない。

1万円給与を上げるためには1万円以上のコストが必要になる。それを考えれば会社が負担したコストに対して社員に届くのは半分以下だ。

企業年金と退職金は一定額まで非課税

ある程度大きい企業は退職金制度や企業年金制度を導入している。これは、そのまま月々の給与で支給するよりもずっと有利な税制度が適用されるからなんだ。退職金(あるいは企業年金)を一時金で受け取る場合、退職所得として扱われる。退職所得の計算式は以下。

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2

勤続年数 退職所得控除額
20年以下の場合 40万円×勤続年数(80万円に満たないときは、80万円)
20年を超える場合 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続30年の社員に、3,000万円の退職金が支給されたとする。
退職所得控除額=800万+70×10=1,500万円。
退職所得の金額=(3,000万-1,500万円)×1/2=750万円となる。
3,000万円の内、2,250万円は一切引かれることなくそのまま社員に支給されるのである。

また、退職所得に対しては所得税と住民税は課税されるが、社会保険料は徴収されない。
実に2800万円以上が手取りとなる。

毎月の給与で支給されるよりも退職所得として受け取った方が社員にとって圧倒的に手残りが大きいことがわかる。

慶弔見舞金は非課税

一般的に慶弔見舞金には結婚祝い金、出産祝い金、傷病見舞金、災害見舞金、弔慰金、入学祝い金、永年勤続祝い金、定年退職祝い金といった種類がある。これらは社会通念上相当と認められるものについては非課税となる。

会社によって慶弔見舞金の種類や金額は結構違う。

自分の会社の社内規程を確認してみよう。

健康保険の料率は組合毎に違う

会社員が加入する医療保険は協会けんぽと組合健保の2種類がある。

常時700名以上の従業員を抱える大企業は独自の健康保険組合を設立することができ、健康保険料率(介護保険料率)は組合毎に自由に設定できる。また、保険料は基本的に会社と社員の折半となるが、会社の負担率を大きくすることもできる。

例えば有名な日本郵船の健康保険料率は6.00%(会社負担率4.5%:個人負担率1.5%)。

日本マクドナルドの健康保険料率が10.70%(会社負担率5.35%:個人負担率5.35%)。

同じ給料をもらっても、徴収される保険料には3倍以上の差がある。

福利厚生を重視するのは社員のため

結局、企業が福利厚生を重視するのは社員のためなんだ。

もちろん昇給は大切だが、同じ費用で最大限、社員の利益が大きくなるよう企業は様々な福利厚生施策を講じている。

先に挙げたのは代表的な例で他にも確定拠出年金制度や食事補助、自己啓発、社員寮や借上社宅の提供など税や社会保険料について優遇される制度は多数存在する。

自身が働く企業を選ぶ際は、給与額だけでなく必ず福利厚生の内容を確認しよう。

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