現代における資格取得の価値について考える

「自身のキャリアを向上させたい」「いい会社に就職(転職)したい」と思ったとき「資格の勉強でも始めてみるか」と考える人は結構多いんじゃないだろうか。一方で「資格なんか取っても意味ない」という声も多い。資格取得の価値、得られるもの失うものについて考えてみたい。

資格取得による最も大きな損失は時間

資格取得による最も大きな損失は間違いなく時間だ。以下、巷で難関資格とされている資格の取得までにざっくり掛かると言われている時間について調べてみた。

公認会計士 4,000時間 税理士 3,000時間
司法書士 3,000時間 弁理士 3,000時間
土地家屋調査士 1,000~1,500時間 中小企業診断士 1,000時間
社会保険労務士 800~1,000時間 行政書士 800時間
マンション管理士 500時間 宅地建物取引士 300時間

もちろん教材を購入したり、講座を受講すれば費用は掛かるけど失う時間に比べたら微々たるもの。日本のサラリーマンの平均時給が1,500円くらいと言われているから3,000時間勉強すると1,500円×3,000時間=450万相当のお金を消費するのに等しい。また時間をお金に変えるのは簡単でもお金で時間を買うのは容易ではない。

資格取得によって得られるもの①:知識

資格を取得するためには勉強をしなければならない。勉強する過程でその分野の知識が身につく。簿記や会計士なら会計の知識が、社会保険労務士なら社会保険の知識が、宅建なら不動産の知識が身につく。その分野の有識者になることができる。

知識の価値はテクノロジーの発達とともに低下している

例えば言語の自動翻訳の精度は近年驚くほど向上している。今まで翻訳家や通訳しか出来なかった仕事の大部分が今では機械によって置き換わっている。また法律について分からないことも検索エンジンに掛ければ有識者の回答をすぐに得ることができる。インターネット上に膨大な量の知識が蓄積され、知識そのものの価値は明らかに低下している。

低下はしても無価値ではない

複雑な物事を考えたり難しい判断を下したりするための前提知識・基礎知識としての価値は損なわれていない。例えば患者の診断を下す医師は複数の症状から様々な病気を想定しなければならないし、複雑な事象が絡み合った場合の法の解釈は裁判官しかできない。まだまだAIで判断できることは限られている。また有象無象の情報から正しい情報を取捨選択するためにもある程度の前提知識は必要になってくるだろう。

何よりアプリ開発や法の制定など新しいものを生み出すためにはその分野における知識を有していることが前提となってくる。以前と比べて知識の価値が落ちているものの決して0にはなっていない。ChatGPTが全ての仕事をやってくれる世界はまだ先の話になるだろう。

資格によって得られるもの②:名誉

医師や弁護士は単純にその資格を持っているだけでもてはやされるし、税理士や社会保険労務士の資格を持っているだけでその分野の仕事に携わっている人からは尊敬される(少なくとも自分は尊敬する)。一般的に資格取得の難易度が高いほどその傾向は強い。

資格によって得られるもの③:自身の市場価値の向上

「資格なんか取っても意味ない」の声が上がる原因は多分これ。取得する資格によって、資格取得時の年齢によって、実務経験の有無によって自身の市場価値の向上が見込めるかどうかが変わってくるからなんだ。

取得したらそれだけで意味のある資格はある

医師や看護師のように資格(免許)がそのまま仕事に繋がる仕事は取得自体に意味がある。医師なんて何歳になっても引くて数多だし、看護師も慢性的に人手不足なので取得すれば仕事に困ることはそうない。

独占資格が即仕事に繋がるとは限らない

それじゃあ、独占資格(特定の業務において、特定の資格を取得している者だけが従事可能な資格)を取得すればすぐにでも資格を活かした仕事に就くことができるかというと、そこまで甘くない。結局のところ市場は需要と供給で成り立っている。医師や看護師が資格(免許)を取得して即仕事に繋がるのは需要に対して供給が足りていないから。社会保険労務士も行政書士もはっきり言って供給過多だ。独立をしたとしてコネでもなければ必死に営業を掛けないと仕事なんて降ってこない。

また40歳を超えて職歴のない公認会計士が監査法人に雇ってもらえるだろうか。40歳を超えて実務経験のない人が、簿記2級を取得して、社労士資格を取得して、経理として人事として雇ってもらえるだろうか。不可能とは言わないが難しいと思う。

ほとんどの資格取得は実務の延長線上に存在するべき

例えば、以下のようなケースは資格取得する意味が大きいと思う。

人事に配属されて3年目。知識の習得と一連の人事業務を理解していることの証明として社会保険労務士の取得を目指すケース。
経理に配属されたばかり。業務を行うための前提知識の習得を主な目的として簿記2級を取得するケース。
経理で10年以上業務に従事している管理職。大手への転職に向けて箔をつけるためにこれまでの集大成として税理士取得を目指すケース。

まずは実務ありきで、資格取得はその延長線長にあるケースがキャリアにとってプラスになるし、モチベーションも保ちやすいと思う。

大切なのは資格取得の目的と本当にそれが手に入るかを検討すること

結局、大事なのは資格を取得する目的と取得したらそれが本当に手に入るかどうかをよく調べることなんだ。資格取得で一発逆転を狙うみたいな発想はだいたい失敗する。勉強に費やす貴重な時間と労力に見合うかどうかを冷静に見極めるのが大切。

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